moon satellite 解説


moon satellite 解説

① 作品名/moonwalk(ムーンウォーク)
色/黄色 ・素材/油彩、水彩、キャンバス、パネル
サイズ/h10000×w7600mm

★ 作家、内海聖史(うちうみさとし)は、絵画と建築の関係性を模索している作家です。
建築空間の中で、絵画はどのようにあるべきかという問いからギャラリー、美術館をはじめ、ビルのエントランスやホールなどにも作品を展開しています。
今回展示されるmoonwalk は「建築空間内での絵画のあり方」を理解する為に、逆説的に「建築から離れる絵画」を志向した物です。
その一つである10mの巨大な絵画は「室内に入らない絵画」として作成されました。
この作品が最初に発表されたギャラリーはもちろん、あらゆる建築でも高さ10mの壁面を有する空間はそれほど多くありません。その中にこの絵画を展示するには様々な工夫を凝らす必要があり、そのつど、「通常の絵画とは何か?」を作家は問う事になります。
今回の旧ライトオンは高さ約8mほどなので、この作品は立ち上がりません。
横幅はとても広いこの空間では、天井の窓から差し込む光がとても印象的なので、常に光の変化が楽しめる中央に、スキーのゲレンデのような斜めの設置をしました。
【色彩について】この作品の色彩は黄色です。②番のグレーと黒の作品とに対応しているのですが、月の色彩をモチーフにしています。
月は通常、自分の目で見ると「黄色」に見えます。
これは、月の表面に太陽の光が反射して「光の色」が目に届いています。
一方、私たちは月が岩石の星だという事も知っています。それなので、ゴツゴツした岩肌のグレーの月の写真を見ても特に違和感を感じずにこれは月だと認識できます。しかし、本当に月の素材が見える程接近して見た人物はアポロに搭乗し月の周回軌道に乗ったのが24名と考えてもほとんどの人はそこまで行けないので、岩石色のグレーの月は「知識の色」と言う事ができます。
私たちは「見た目の月」と「知識の月」を違和感なく同時に理解して認識しています。
しかし、それと似たような状況が絵画にも起こります。
絵画を見ている時、果たしてそれは色を見ているのでしょうか?それとも素材を見ているのでしょうか?それとも、物語、意味、歴史、構図、リズム、メッセージ、コンセプト・・・
それらが混合し、分ちがたく結びついているのが絵画ですが、それが「月」の事を考えるに「色彩」と「素材」という絵画の主要な問題が物質的な距離によって分かれている事で分離しています。
そこから着想を得て、黄色とグレーの色彩を使用して描いています。
【タイトルについて】
タイトルの「moonwalkムーンウォーク」はマイケル・ジャクソンのダンスの一種の名前からとっています。
月面着陸の映像を見た方はご存知でしょうが、実際の月面歩行はピョンピョンという感じで、マイケル・ジャクソンのダンスの動きとは全く違います。
しかし、現在のmoonwalkという言葉で想像するのはマイケル・ジャクソンの方ということは、現実をエンターテイメントが追い越している事例だと感じ、その語感の軽やかさも相まってこのタイトルにしました。

と、ここまで色々説明しましたが、本当は、でっけぇ黄色い作品って見た事が無いから造ってみたかったというのが本心です。

② 作品名/moonwalk(ムーンウォーク)
色/グレー、黒 ・素材/油彩、水彩、キャンバス、パネル
サイズ/h1158×w1158m
  ★10mの作品①と対になる作品。
サイズ/h10000×w7600mm
①はサイズによって建築から離れる試みでしたが、こちらは作品サイズの由来によって建築から離れる試みです。
こちらの作品のサイズは1158mmの正方形で、この長さはwikipediaに掲載されている月の直径3474kmの300万      分の1です。
3474000000mm×3000000=1158mm
①も②もそのサイズや由来を聞いた際に、一瞬「ん?」という感じで目の前の作品を越えて別の空間や遠い月を思い描くかと思います。
その建築から離れる感じ、展示される建築と整合性の無い状況を今回は造っています。
本来グレーの作品と黄色の作品が対をなしていましたが、今回新作で黒い作品、新月バージョンを作成しました。

③ 作品名/moonwalk(ムーンウォーク)
色/黄色 ・素材/ネオン、キャンバス、パネル
サイズ/h1158×w1158mm
★ ②番の作品に対応して同じサイズで作品を作成しました。
グレーの「素材(知識)の月」に対し、黄色の「光(色彩)の月」でしたが、今度は実際に画面が光る絵画にしたらというアイデアから新作で作成しました。
会期中は夜通し点灯しているので、陽が落ちた後は黄色の光が展示空間全体に回って夜も美しいです。

④ 作品名/moonwalk(ムーンウォーク)
素材/鉛筆、方眼紙、青焼き
★ ①作品を制作する際にmapとして使用していたドローイングです。
制作方法として、先にドローイングを作成して油絵に起こすのではなく、油絵で最初に画面に描いてからそれをこの方眼紙に写してゆきます。
絵画はあくまで油絵の画面本位で作成され、現状確認用としてmapが作成されます。
また、今作品は「建築」を意識して作成されたものなので、そのmapを建築でよく使用される「青焼き」にて出力して展示しました。現在青焼きは感光紙の生産停止により国内ではほぼ作成できません。

⑤ 作品名/moonwalk(ムーンウォーク)円環
素材/油彩、水彩、綿キャンバス、パネル
  サイズ/h50×w50mm
★5cm角の作品が12点1組。それをグレーと黄色の2組作成しています。
絵画内の色彩の配分は、満月から三日月を経由して新月、そしてまた満月になるまでの光と影の比率で作成しています。
作品のサイズから、展示方法は様々想像できる作品で、その点でも建築や壁から逸脱できる可能性のある作品として提示しています。

⑥ 『展覧会タイトルについて』
出品している作品自体は「moonwalk」だが、展覧会名は「moon satellite ムーンサテライト」としています。
月(moon)は地球の衛星(satellite)ですが、この展示では鑑賞者が「月の衛星」のように展示会場をグルグル周る事になるので、その鑑賞者の動き自体をタイトルにしました。
2016年 内海聖史