地震


誰もが感じる様に、揺れ始めは「なんだ地震か」と思う程度で特に気にしなかった。
一気に震度が上がった瞬間、「ヤバい。これは死ぬヤツじゃないか!?」と感じ柱の密度の多い場所に移動した。
床がグニャグニャに揺れ、バキバキと音がした。
幸い床や屋根が抜ける事は無かったが、家の塀が崩壊した。

余震が多いので何かを片付ける気持ちにならなかった。
戻してもまた倒れる可能性があるので下手に手が出せなかった。

人は物の起こりうる未来に対して恐怖する。
例えばナイフや銃はそれが使用される事が想像出来るので、観た瞬間に恐怖を感じる。
しかし、大きな地震の時には建物そのものが凶器としてそこにあるようなものである。
余震でグラグラに揺れる隣家を観ながら、拠り所の無さを感じた。

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倉庫では梱包された作品が軒並み倒れていたのだが、サイズが大きいのでお互いに支え合っており問題は無かった。
制作中の作品は一枚一枚が軽いからなのか、奇跡的に全く倒れていなくてとても安堵した。
揺れている間にも作品の事が気にかかっていたのでひとまずは落ち着いた。

全面停電で、信号なども止まっていたのだが、どこからかラジオの音が聞こえて電池式のラジオの存在を思い出す。
宮城が震源の地震だと聞いて、東北からここまで伝わる地震なんてあるのだろうかとにわかに信じられなかった。
僕のいた地域は震度6くらいだったのだが、被害はそれほど大きくなかったようだ。
近くの町では1m以上断層がズレて道路が割れているらしい。

何か買おうかと思ったが、暗いコンビニは長蛇の列でスーパーは全て閉まっていた。
大きなガラスを使用している店は割れたりしていた。

空が煙ったような雲に覆われ、少しだけ雨がパラついてから晴れた。
以前TVで観たのかなと思うのだが、大きな地震の時には雲や雨が降るというのは本当だった。
それを自分が確認する日が来るとは思わなかった。

停電とはいってもどこかで回復するのではないかと考えていたので、バッテリーで動くノートパソコンの明かりで書類系の作業をした。
停電ではネットは使えなかった。
ラジオから聞こえる情報は余震の度に与えられる震度情報以外は地震の甚大さをまくしたてていた。

深夜はオルゴール調の愛の讃歌か何かが流れていた気がする。
間を置かず地震警報が鳴ったり、警報が鳴らずに余震が来たり、夜が明けるまでとても長く感じた。
停電は22時間程度でひとまず復旧した。