三日月沼


利根川河川敷に川から少しだけ水が引かれている三日月沼があった。
川から小さな横溝が通してあって、そこからすこしだけ水が入ってくる。
増水でもしないかぎり、水が入れ変わる程は流れていなく、よどんだ水は水性動物の宝庫だった。
土手の上から一面にみえるアシの原でも何カ所か木が生えていて、その中でもまとまって木が見える一角の下が三日月沼だった。
20m位の水が溜まる場所が木々に覆われて、平野のからっとした明るさの中、しっとりと影を作っていた。
そのころは三日月沼なんてしらなっかったので、単に沼とか言っていた。
沼は周りの木々で常に日陰になっていて、オタマジャクシのシーズンはその影の形びっしりに黒いオタマジャクシが群れていた。
小学生が入っても、スネくらいまでの深さで、オタマジャクシは拾ったビニール袋満タンにとれた。

小学校2年生のある日袋いっぱいのおたまじゃくしをもって土手を歩いていたら、自転車で通った上級生に呼び止められ、川で遊ぶことを強く咎められた。
注意と言うよりは、自分のテリトリーに入るなという威嚇のニュアンスが含まれていた。
低学年の僕たちには上級生はとても怖い存在に見えていた。
その上級生が学校の担任にも言いつけた事で、僕たちは放課後に呼び出され、川には行くなと注意された。
小学生の世界観では、学校の先生は自分の世界を牛耳る存在の一人なので、とても恐ろしかった。
怒り方が恐ろしいのではなく、その怒りによって、自分が今繋がる社会から疎外されてしまうのではないだろうかという恐怖があった。

その後も川では遊んでいたのだが、沼はなんとなくミソがついてしまったことと、沼の暗さが夏以外に僕たちを引き付けなかった事もあり、、すこし大人になるまで暗黙で行くのをやめた。
ある日護岸工事が急速に進められ、あっさりと三日月沼は平らに埋め立てられた。
ろくでもないことになったなぁと土手の上から見える長く広大で平らな赤土を観ながら思った。

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